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nankotsuteacher - bd+psr+e


Heinrich Schwarzer - Figur0_3?-?39


koutaro fukui - PSyncP


peb - Round I [Aria]


Cam Deas & Jung An Tagen - That (yGrid?/?D#) (Second Woman Remix)


mesaelechtele

http://ondomusic.com/mesa.elech.tele/

※本作の正式なタイトルは"scene wa kawaru kamo shirenai ga, mizuumi kara tohku e iku koto wa nai. kaze ga fuite iru"(本記事のタイトルでは字数制限のため省略)。



 本作は、湖に関するドキュメンタリーの架空のサウンドトラックとして制作されたという。各曲には日本語のタイトルが付されており、ドキュメンタリーの様々なシーンに対応している(何故か楽曲はscene-08から始まり、scene01-07は失われている!)。


 サウンドソースとしては、"Ultimate_Collection hydrocycle on a lake"の収録曲"by the lake in the early morning"(https://tokinogake.bandcamp.com/track/by-the-lake-in-the-early-morning)と同様、架空の音響合成方式"Hydrocycle Synthesis"が用いられている。



 "Hydrocycle Synthesis"(以下、HC合成)は、FM(frequency modulation)合成を応用した独自の音響合成方式である。複数のFMオペレーターを組み合わせ(HC合成のオシレーターひとつにつき、30ものFMオペレーターが用いられている!)、更にランダムネスを加えることで、複雑な揺らぎをもつ音響を得ている。


FM合成を、数式で表現すると、次のように記述される。Aはキャリアの振幅、Cはキャリア周波数、Mはモジュレーター周波数である。

 

 f(t) = A sin(2πCt + D sin(2πM t)


 一方、HC合成は、以下の数式で記述される。周波数にランダムネスが取り入れられていることが分かる。


 hydro(t,n) = sin(t^2/50*pi*rand~)*a+sin(t^2/50*pi*rand~)*a^n+sin(t^2/50*pi*rand~)*a^(n+1)...



 HC合成のMaxパッチは、通常の音響合成方式と異なる独自のパラメータを持っている。"speed"はキャリア周波数、"reflect"はモジュレーターとキャリアの周波数比(harmonicity ratio)、"beam"は変調指数(modulation index)に近いが、内部にランダムネスが取り入れられている。"height"は、HC合成のレベルをコントロールし、depthは、ごく短いディレイを重ねて付加することで、響きに更なる揺らぎを加えている。


 "speed"、"reflect"、"beam"が小さい値では、澄んだ音色の穏やかなドローンが得られるが、それぞれの値を大きくしていくと、カオティックなノイズが得られる。前者はscene-20、後者はscene-14などで聴くことができる。


 また、エフェクト部は、sin波、cos波を組み合わせ、寄せては返す波のようなLFOを実現しており、scene-11、scene-18で聴かれる海鳴りのような低音や、scene-12、scene-15で聴かれる間歇的なノイズのリズムは、このLFOの効果によるものと思われる。


 "scene wa kawaru kamo shirenai ga, mizuumi kara tohku e iku koto wa nai. kaze ga fuite iru"は、FM合成を応用した"Hydrocycle Synthesis"という独自の音響合成方式により得られる、複雑な揺らぎを持った音響を構成することで、湖畔の生態系が発する密やかなノイズを、顕微鏡で拡大してみせたような作品である。



 湖は、自然の景観を飾る、最も美しく、意味深い造作です。

 湖は大地の目です。

 人は湖を覗いて、自分の本性の深みを探ります。 


H.D. ソロー「ウォールデン 森の生活」



※Uhito Kiyosue氏のプロフィールおよび過去のリリース作品、Hydrocycleシンセを実装したMaxパッチのリンクについては、以下の記事を参照。

mesaelechtele - by the lake in the early morning

https://www.tokinogake.com/post/mesaelechtele-by-the-lake-in-the-early-morning



※参考文献

・カーティス・ローズ『コンピュータ音楽 - 歴史・テクノロジー・アート』青柳 龍也・小坂 直敏・平田 圭二・堀内 靖雄訳

・H.D. ソロー『ウォールデン 森の生活』今泉 吉晴訳



 mesaelechteleことUhito Kiyosue氏は、シカゴ音楽院にてPatricia Moreheadに作曲を、バークリー音楽院にてCsoundの開発者の一人であるRichard Boulangerに音響合成を学び、作曲家、レコーディング・エンジニアとして活動。「ポスト・ケージアン」を自称し、現代におけるプロセスとしての作曲を実践しているアーティストである。


 Koutaro Fukui氏と共同でon;(do)レーベルを運営、優れた作品をリリースすると共に、自らはMax/MSPで開発したアプリケーション、Maxパッチを無料で公開している(http://www.ondomusic.com/mesa.elech.tele/)。




 本コンピレーションに収録された楽曲は、本作品のために新たに開発された架空の音響合成方式"Hydrocycle Synthesis"を実装したMaxパッチ※により制作されている。




 パッチは大まかに2つのオシレーター、2つのモジュレーターから成り、オシレーターのパラメータはspeed, refrect, beam, height, depth、モジュレーターのパラメータはshore, windと、いずれも通常の音響合成方式と異なる、自然現象から着想したような独特の変数を持っている。

 "HYDROCYCLE SYNTHESIS"パッチにより作成された複数の音響を、ランダムネスを取り入れた"HYDROCYCLER in ALEATORY"パッチ上で再生、重ね合わせることで、本楽曲における複雑な揺らぎをもつドローンが生み出されている。


※Hydrocycle SynthesisのMaxパッチは、Uhito氏のTwitter上で公開された以下のリンクよりダウンロード可能。

https://www.ondomusic.com/mesa.elech.tele/dates/Hydrocycle_Synth_MaxPatch.zip


Selected Discography


Les Rendez-vous de Tokyo (2011)

https://music.apple.com/jp/album/les-rendez-vous-de-tokyo/438231462


 フレンチレストランのサウンドトラックとして制作された一枚。ウーリッツァーピアノやギターの音が繊細にプロセシングされた、雪の結晶のように美しいサウンド。レストランでのライブ・レコーディングらしく、いくつかの楽曲ではレストラン内の話し声や食器やグラスのぶつかる音が聞こえてくるが、不思議と(?)耳障りでなく、音楽の一部として共存している(Bill Evans TrioのMy Foolish Heartにおけるノイズの効果と近いものを感じる)。断片化されたメロディと、生活のシーンに寄り添うような静謐で控えめな音響は、Erik Satieの提唱した『家具の音楽』の新しいかたちと言えるかもしれない。



postludes_for_piano(2013)



 Maxパッチによるアルゴリズミックなピアノ作品集。サイン波を使った関数で音程、時間間隔、強度が決定されており、各曲のタイトルは、パッチに入力されるパラメータを示していると思われる。単純なランダムネスと異なり、パラメータとして入力される数字が確定すれば楽曲も確定され、まさに「プロセスとしての作曲」の真骨頂と言える。システマティックな作曲法にも関わらず、周期の異なる2声の交わりから、とても叙情的なメロディが聞こえてくる。

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