mesaelechteleことUhito Kiyosue氏は、シカゴ音楽院にてPatricia Moreheadに作曲を、バークリー音楽院にてCsoundの開発者の一人であるRichard Boulangerに音響合成を学び、作曲家、レコーディング・エンジニアとして活動。「ポスト・ケージアン」を自称し、現代におけるプロセスとしての作曲を実践しているアーティストである。


 Koutaro Fukui氏と共同でon;(do)レーベルを運営、優れた作品をリリースすると共に、自らはMax/MSPで開発したアプリケーション、Maxパッチを無料で公開している(http://www.ondomusic.com/mesa.elech.tele/)。




 本コンピレーションに収録された楽曲は、本作品のために新たに開発された架空の音響合成方式"Hydrocycle Synthesis"を実装したMaxパッチ※により制作されている。




 パッチは大まかに2つのオシレーター、2つのモジュレーターから成り、オシレーターのパラメータはspeed, refrect, beam, height, depth、モジュレーターのパラメータはshore, windと、いずれも通常の音響合成方式と異なる、自然現象から着想したような独特の変数を持っている。

 "HYDROCYCLE SYNTHESIS"パッチにより作成された複数の音響を、ランダムネスを取り入れた"HYDROCYCLER in ALEATORY"パッチ上で再生、重ね合わせることで、本楽曲における複雑な揺らぎをもつドローンが生み出されている。


※Hydrocycle SynthesisのMaxパッチは、Uhito氏のTwitter上で公開された以下のリンクよりダウンロード可能。

https://www.ondomusic.com/mesa.elech.tele/dates/Hydrocycle_Synth_MaxPatch.zip


Selected Discography


Les Rendez-vous de Tokyo (2011)

https://music.apple.com/jp/album/les-rendez-vous-de-tokyo/438231462


 フレンチレストランのサウンドトラックとして制作された一枚。ウーリッツァーピアノやギターの音が繊細にプロセシングされた、雪の結晶のように美しいサウンド。レストランでのライブ・レコーディングらしく、いくつかの楽曲ではレストラン内の話し声や食器やグラスのぶつかる音が聞こえてくるが、不思議と(?)耳障りでなく、音楽の一部として共存している(Bill Evans TrioのMy Foolish Heartにおけるノイズの効果と近いものを感じる)。断片化されたメロディと、生活のシーンに寄り添うような静謐で控えめな音響は、Erik Satieの提唱した『家具の音楽』の新しいかたちと言えるかもしれない。



postludes_for_piano(2013)



 Maxパッチによるアルゴリズミックなピアノ作品集。サイン波を使った関数で音程、時間間隔、強度が決定されており、各曲のタイトルは、パッチに入力されるパラメータを示していると思われる。単純なランダムネスと異なり、パラメータとして入力される数字が確定すれば楽曲も確定され、まさに「プロセスとしての作曲」の真骨頂と言える。システマティックな作曲法にも関わらず、周期の異なる2声の交わりから、とても叙情的なメロディが聞こえてくる。





 Disorganised and Unwanted ―― 無秩序で不要なもの。

身の回りの生活音や会話などのフィールドレコーディングが多く聞かれるこの作品に、敢えてこのようなタイトルを冠することで、Guy Birkinは、コロナ禍において益々過剰な組織化、効率化が進む現代社会において、本当に必要なことは何か、改めて問いかけているのかもしれない。


 収録曲の多くには実在のイギリスの地名が付されており、現在のイギリスのサウンドスケープを表した作品とも言える。

音楽家、音響生態学者のBernie Krauseは、サウンドスケープの構成要素を以下の3つに分類している。

 1. Geophony; 自然界の非生物による音(風、水、大地の動き、雨など)

 2. Biophony; 生物による音(鳥や虫の鳴き声など)

 3. Anthrophony; 人間の活動による音(機械音、交通機関の音など)

これらにエレクトロニクスも加えて、各曲の構成要素を分類すると、以下のようになる。

"Day"と"Night"の2部構成の作品だが、01〜08が"Day"、09-16が"Night"である。

前半の”Day"には、鳥の鳴き声、虫の羽音など、biophonyに分類される音が聞かれるが、後半の"Night"には全く登場しない。代わりに雨の音、風の音、火の爆ぜる音など、geophonyに分類される音が、前半に比べ増えている。

Anthrophonyは収録曲のほとんどに聞かれ、子供の声、会話、車の交通音など、人の生活圏を感じさせる音が多く登場する。


 前半、後半ともに、2/3の楽曲には、シンセサイザーや、フィールドレコーディングの加工による電子音が加えられている。

いくつかの楽曲は、20x20 Projectからのリリース"Processed Field Recordings"と、素材とアイディアを共有しており、03における鳥の声でトリガーされるNative Instruments Razorや、09における雨の音と、恐らくそこからフーリエ変換、再合成により抽出されたサイン波のドローン、011における花火の音のピッチ変換(ディレイタイムの変化によるエフェクトか)などは、面白い効果を生んでいる。


 最後に、R.マリー・シェーファーの名著『世界の調律』で冒頭に引用されている以下の文章を、再度ここで引用したい。


 ぼくはもう何もしないで聞くだけにしよう……

 ぼくには聞こえる、合流し、結びつき、溶けあい、あるいは追いすがるすべての音が、

 都会の音と都会の外の音が、昼と夜の音とが……

ウォルト・ホイットマン「ぼく自身の歌」



※参考文献

・Bernie Krause, The Great Animal Orchestra: Finding the Origins of Music in the World's Wild Places.

・R.マリー・シェーファー『世界の調律 サウンドスケープとはなにか』鳥越 けい子訳



1 ROCKY×HOPPER - Let`s Groove ~Jamaican Breeze Mix~

2 Jonwayne - Featuring Mndsgn

3 Vga Host - Furry Lawnmower http://lolicore.org/Eerik%20Inpuj%20Sound/inpuj077%20vga%20host%20-%20copper%20lemon%20zinc%20%28remaster%29/

4 Wwcarpen - wing http://lolicore.org/Eerik%20Inpuj%20Sound/inpuj084%20wwcarpen%20-%20wwcarpen%20is%20dead/

5 Dodori - Sisters Error

Ton Mise https://soundcloud.com/ton_mise

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